マンションのリフォーム・リノベーション、新築戸建はハンズデザイン一級建築士事務所|千葉県 船橋市 東京

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Oさんの大切なものがあつまる大好きな場所のリノベーション

Oさんは私たちのチラシを見て「私たちの家」の相談会に来て下さいました。「何年も前からリノベーションをしたいと思っていたけれども、なかなか思い切れずにズルズルときてしまった」とのことでした。色々な課題について話し合ったあと、せっかくなのでとにかく相談を継続しましょうということで再会のお約束をしました。

ーそれから半年後、Oさんから準備ができた旨ご連絡あり、ご相談がスタートしました。リノベーションは大きなことですので、準備にかかる時間も人それぞれですし、決断できた時が良いタイミングだと思います。

Oさんの家にはお孫さんがよく遊びにきていてとても賑やかです。打合せの時はいつもお嬢さんとそのお子さん、Oさんにとってのお孫さんも一緒に迎えてくれました。様々な料理を作って家族が集まり、みんなで食事をするそんな時間をとても大切にされているのです。

その料理のための器や飾りを集めることもOさんの大好きなことのひとつです。旅先での出来事、陶芸作家さんやお店との出会いを大切にして、持っている器一つひとつに物語をお持ちでした。

Oさんがリノベーションを何年も保留していたのは、そんな器えらびと同じように出会いを大切にされていたからかな…と思います。私もそうですが、探し物には理屈抜きでピンとくるものです。たまたま「私たちの家」を見てピンときてくださったのかな、と様々な器を見せて頂きながら思っていました。Oさんと出会いと一年半の間の様々な対話は私たちのとってもかけがえのないものになっています。

『このマンションを新築で買った時から、いつかリノベーションするからと思って、収納はとりあえずの家具でその場をしのいできました』というOさん。その気持ちはとても共感できます。誰でも中途半端なものにはお金も労力もかけたくないものですよね。
Oさんのお住まいにご訪問させて頂くと思っていた通り、様々なものがパッチワークのように置かれていました。『できれば見せたくなかった』とおっしゃっていましたが、そうなってしまったのはOさんが悪いのではないのです。

 

それでは、そんなOさんの大切なものがあつまる大好きな場所のリノベーションをご説明させて頂きたいと思います。

1つ目の課題は、モノの量です。
Oさんはすごくがんばって下さいました。2週に一度、お打ち合わせにご訪問するのですが、そのたびに整理され量が目に見えて減っていることがわかり、私たちもすごくうれしかったです。そんなこんなで前半は片付け談義です。捨てるか、残すか…を何度も繰り返しました。「断捨離」という言葉が昨年あたりに流行ったこともあり、私たちやOさんも少し焦っていたかもしれません。結局のところ半分にはなりませんでしたが、私はそれで良かったのではないかなと思っています。大切なものがたくさんあるのは素敵なことです。捨てるのに適したタイミングもあるのだと思います。

2つ目の課題は、モノが多く見えないようにすることです。
1つ目の課題と背中合わせになりますが、モノがあるとそれだけ空間が占領されます。OさんはスッキリとしたシンプルなLDKを望んでいました。Oさんと私たちが時間をかけてモノの量と分類を把握していたのはこのためです。長く生活してきた住まいでは「どのくらいものをもっているか」ということをイメージすることは意外に難しいことです。今回は大きさがわかるように写真を撮るなどしてまとめていきました。下の写真は引き出しの大きさに食器を並べて確認しているところです。わかりやすいですよね。

 

私たちが考える収納には3つの段階があります。

・住まい手が対応する

→収納雑貨や置家具など住まい手が暮らしながら対応するもの。収納したいものが小さくて量が少ない場合はこのやり方で楽しんでもらいたいと思っています。

・造付家具で対応する

→空間に合わせた固定的な家具(洗面化粧台・キッチンなど)を施工して対応するもの。収納したいものが小さくて量や種類が多い場合や使い方が決まっていてこだわりたい場所ではご提案しています。

・建築で対応する

→押入・納戸・壁面収納・床下収納など建物の一部を収納にするもの。収納するものが大きい場合や使用頻度が低いものがたくさんある場合にご提案しています。

当たり前ですが建築で対応する部分が増えれば、どこかが狭くなります。造付家具は良さそうですが大幅なコストアップになります。ものが多い時に住まい手だけで対応しようとするとパッチワークのような風景になり、上手くやるとそれも味になることもありますが…まあいろいろ大変ですよね。

結果的にOさんの家では「造作家具の対応」で狭さを感じさせないところまで目一杯に収納を用意することになりました。8割程度のものは行き場が決まっています。しかし、完全にすべてが納まるかどうかは微妙なところだと思います。でもどうでしょうか。どんなに十分だと思う収納を用意しても、詰め込んで行けばいつか溢れてしまいます。Oさんともそんな話をして、全てを収納してあまりある収納量よりもスッキリとして広がりのある空間を優先することになりました。まあ、そうはいっても、すごい収納量ですけど。

私たちの住まいづくりではいつものことですが、今回もキッチンが一番重要な部分でした。LDKがコンパクトになるほど、またオープンになるほど、キッチンの存在感は大きくなります。

キッチンには様々なものがあります。調理家電、調理道具、食器、食材、レシピ本、ゴミ箱、フキンなど。全部がバランスよく納まっていれば良いのですが、それがなかなか簡単ではないのですね。キッチン特有の深い奥行きや微妙な高さの関係、カウンタートップの広さの配分など…。

対話を繰り返してできあがったOさんのキッチンのカタチはこちらです。

お孫さんたちが遠慮なく泊まれるようにもともとあった和室は畳の間として残すことになりました。リビングが明るくてもしっかりと間仕切ることができる戸襖は、普段は戸袋の中にしまって存在は見えません。和室の用途としてはそのくらいなので少し狭くしてその分リビングを広げました。

普段はリビングと一体的になるので和室全体を床の間のように見立てています。琉球表を縁敷(えんじき)の縁無(へりなし)に仕立て名栗加工のナラの板床と合わせて野趣がありつつスッキリとした表情になっています。言葉だけでは表現できないので少しだけ写真をお見せします。

ワンルーム空間の中に、その他にも様々な仕上げ、素材を使っていて様々な表情がありながら、上質な統一感があります。丁寧なライティングとあいまってOさんの住まいらしい上品な雰囲気になったと思います。一つひとつの素材について、Oさんと悩んだり、ショールームに見に行って新しい発見があったり、楽しい時間が思い起こされます。暮らす人がその体験をすることが「住まいをつくる」ということの大切なステップだと私は思っています。

来週はいよいよお引越しです。明るく社交的なOさんご家族とその住まいが醸し出す雰囲気をお伝えしたいと思い、あえてとてもイラストタッチな表現のパースにしてみました。実際の空間は非常に精緻でクオリティが高い仕上がりになっていますが、今までのOさんご家族らしいおおらかな暮らし方が続いていくことを私たちは願っています。その雰囲気はもうしばらくしたら写真でお伝えできると思います。お楽しみに!

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