マンションのリフォーム・リノベーション、新築戸建はハンズデザイン一級建築士事務所|千葉県 船橋市 東京

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マンション暮らし 、暖の取り方を考える

こんにちは。

少しずつ寒さが和らぎ、春の気配を感じるようになりましたね。
隣の公園を散歩していると、早咲きの桜を見かけるようになってきました。

このブログを書いている間に暖かくなってきてしまったので
少し季節感のない話題になってしまいましたが、ご容赦ください。。。

今回はマンションでの暖の取り方について考えてみたいと思います。

コンクリートでできていて気密性の高いマンションは、
一戸建てに比べて簡単に暖かく過ごすことができます。左右上下お隣がいればなおのこと。
そんな暮らしやすさを気に入って、マンションを選ばれる方も多いはずです。

私たちの家を事例に冬の暖房計画を考えてみたいと思います。

広さは72平米、間取りはほぼワンルームです。
部屋を仕切るドアはトイレにしかなく、どこまでも空気がつながっている間取りです。

メインの暖房は南側にガスファンヒーター1台、北側にデロンギ1台で行っています。

中央付近の緑のラインで空気の通り道が狭くなっているので
南はガスファンヒーター、北はデロンギに暖めてもらい、全体が暖かくなるように計画しています。

私はエアコンの上から降りてくる温風と空気の乾燥が苦手なため、
冬にエアコンの出番はほとんどありませんが夏には大活躍しています。
ダイキンのrisoraシリーズ、デザイン性はいいので使わない季節も存在はあまり邪魔になりません。

エアコンについては下記の記事を参照ください。
https://www.hands-a-design.jp/blog/5153.html

メイン暖房であるガスファンヒーターは、とても優秀です。
ガスが燃焼するときに水分が発生するため、空気をあたためると同時に加湿もしてくれ、
湿度を快適に保ってくれるのです。

エアコン同様に温風が出ますが、足元から発生するので顔にあたることもなく
部屋の下から上まで万遍なく温まる感じがします。
パワーがあって温まりが早いのもいいですね。

私たちの家のものは古い器具なので見た目がちょっとレトロですが、
最近はもう少しデザインも良くなっていますので、おすすめできる暖房器具です。

北側はデロンギのマルチダイナミックヒーターを使っています。
朝の4:00〜9:00、夕方の16:00〜00:00の間、24度に設定して運用しています。
朝起きる時も寒さを感じず快適です。
輻射熱により部屋全体をじわじわ温めてくれ、
風が発生しないので私たちの家の暖房器具の中でも一番快適だと感じます。

主に2台の暖房器具で72平米、窓の多いワンルームのようにつながっている私たちの家でも、
どこにいても寒さを感じることなく快適に過ごすことができています。

逆に扉で部屋を仕切って暖房が届かない廊下や玄関などの場所をつくってしまうと、
部屋の往来時に寒暖差を感じ、不快に感じる要素となると考えています。

どこにいても快適な空間にするためには細かく部屋を仕切らず、
部屋の容積に対して充分な能力(少し大きめの容量)の暖房器具を選ぶといいと思います。

エタノール暖炉はマンションで唯一設置できる煙突のいらない暖炉です。
大きなアルコールランプをイメージしていただくといいと思います。

炎には1/fゆらぎ効果があり、リラックス効果があるので
私たちの家では休日の特別な時間を過ごすときに使っています。

実際に10年間暮らしてみて、いくつか後悔もあります。

ひとつは北側にもガス栓を引いておけばよかったと思うことです。
詳細に検討した訳ではありませんが、ガスファンヒーターの方がつけている時間が長いのに
料金が安いので、電気代が安くて済んだのではと思います。

ガス栓の増設は、床下や壁の中に配管を行うためリノベーション工事の初期でしか行えませんので
興味のある方は早めに希望を工事店に伝える必要がありますので、ご注意ください。

それと、タイル仕上げにした洗面所の床にも床暖房を入れればよかったなと思うことです。
タイル仕上げの床は、冬とても冷たくなり、特に素足で過ごすことの多い場所には
床暖房があると快適だっただろうと思います。
キッチンの床だけは、電気式の床暖房が入っているのですが、
じわじわと足元から暖かさが伝わってくる感じは、やはり快適です。

ときどき無垢の床は床暖房ができないのでは?とご質問を受けることがありますが
床暖房対応の無垢材を選び、適切な施工を行えば問題ありません。

マンションで暖かさを保つためには、ほんとうは窓の話題にも触れる必要がありますが、
話が長くなるのでまたの機会にじっくりと。
ひとことで言うなら、北側は窓を2重にすることがマンションでは一番の解決策です!

あと少しすれば、桜が咲く美しい日本の春がやってきます。
その頃には楽しいお花見ができることを切望しています。
一緒に頑張りましょう!

みんなの家ができるまで

みなさんとの出会いから住まいの引き渡しまでのスケジュールのお話をしたいと思います。

別のページ「私たちの物件の探し方」も参考にしてください。

会社選び

まず会社選びです。

毎日の暮らしの風景、暮らしやすさなどを委ねる相手を選ぶことですので、しっかりと研究していただきたいと思います。

今はどの会社もホームページや事例写真などが充実していますので、比較しやすくなっていると思います。昔はパンフレットなどの資料請求というものがありましたが、今ではあまり意味がなくなりました。

ある程度方向性が見えてきて、候補の会社が絞られてきたら、それぞれの会社の人の話を聞きに行って頂きたいと思います。もちろんハンズデザインにも。そしてできれば、完成見学会などで実際の空間も体験していただければと思います。

会社としても見る必要がありますが、人間もよく観察する必要があります。

デザイナーや設計者というのは当たり前ですがそれぞれ個性を持っていて、住まいづくりの考え方、好みの空間の雰囲気、話し方など様々です。完成した暮らしの風景と何気ない会話の雰囲気を知ることで自分に合った人に出会えると良いと思います。

ここまでの過程で依頼先を決定できれば一番いいですね。

相談会・顔合わせ

ハンズデザインが候補に残っていれば、是非お問い合わせください。

まず私たちの家にお越しいただいて、私たちの家を見学して頂いたり、具体的なご質問にお答えしたりと、お互いに様々なお話をします。

相談相手として話しやすいかなどもご判断ください。

訪問・調査・ヒアリング

実際にご提案させていただくことになったら、今度はご訪問させて頂きます。

計画物件の計測、調査、竣工図の確認を行います。

また現在のお住まいでの暮らし方を見せて頂きつつ、具体的なご要望のヒアリングを行います。

竣工図というのは建設時の図面図書で、管理室などに保管してあります。私たちが訪問して閲覧し、必要箇所の写真を取らせて頂きます。

プラン検討:

2週間ぐらいお時間をいただいて、私たち2人であーでもないこーでもないと言いながら検討を繰り返します。

プレゼンテーション

前提となる建物の構造や設備などの条件をご説明した後、新しい平面図をご覧いただいて全体のご説明をします。また、3Dモデルで住まいの中を歩いている視点で新しい暮らしの風景を見て頂きながらさらにご説明します。

ご提案として可能性を感じていただけたら、お見積もりについてのご説明と素材や設備についての簡単なヒアリングを行います。

見積もり作成:

2週間ぐらいお時間をいただいて、各社に見積もり依頼したり、素材の選定、面積、数量の拾い出しなど行います。

見積書提出

具体的な設備の品番、仕上げ素材の数量、工事にかかる手間など一つひとつ詳細に金額が明示されている十数ページぐらいの見積書を一行ずつご説明します。どこにどんな風にお金がかかるのか良くわかっていただけると思います。

お申し込み

プレゼンテーションと見積書、両方の説明を受けてお考えいただき、この段階ではまだ希望している住まいや金額とはギャップがあるけれども、ハンズデザインと打ち合わせを重ねていくことによって良い住まいづくりができそうだと納得していただけましたらお申し込みをして頂きます。

打ち合わせ期間

大急ぎで4ヶ月、標準で6ヶ月、またはもっとゆっくりじっくり時間をかけても大丈夫ですが、打ち合わせをしていきます。

場所はご訪問させていただいても、私たちの家にお越しいただいても、カフェやレストランなどでも大丈夫です。一部オンラインも取り入れています。

打合せの方法は2週間に一度、お互いに宿題をこなして交換する、キャッチボールをするような形で進みます。

2週間の間、例えば「洗面室」にフォーカスして生活して頂きます。意識的に生活することによって要望や不満点、収納するものや方法などできるだけ思い起こしていただきます。

そしてお会いしたときにその内容を教えて頂きながらお話をして、ハンズデザインが次回までに検討して詳細な提案を行います。これを住まいの全ての場所で繰り返します。

お互いに結構大変な作業ですが、やり切った後は具体的な暮らしが想像できて安心感があると思います。

再見積もりの提出

打合せ期間に暮らし方、素材、設備など全ての確認が済んで決定したところで再度お見積もりをまとめます。ここでもう一度全体のコストを見直して予算とのバランスをとります。

ご契約

設計と見積もりが決定したらご契約です。もちろん細かな部分で決まりきらないこともありますので、契約後の打合せや工事期間中にも追加変更を行います。

工事期間:

約3ヶ月です。ハンズデザインではいつも同じスペシャルなチームで施工を行っています。阿吽の呼吸が通じる仲間です。

施主検査後、予備・是正期間として1週間を含んでいます。

お引き渡し

最初の訪問調査からここまで、標準的に10ヶ月です。

急ぐ場合は打ち合わせ期間をタイトにするしかないですが、短縮できて8ヶ月程度だと思います。

少し長いと感じられるかもしれませんが、住まいづくりは労力もお金もかかりますし、楽しくて快適な暮らしのための特別な期間ですので、ご理解いただければと思います。

新しい暮らし

自分のために考えてつくった住まいでの暮らしは格別です。末長く特別な毎日を重ねて頂きたいと思います。

私たちの物件の探し方

ハンズデザインは不動産屋さんではないので、物件探しは行っていません。

私たちが考える物件の探し方を書いてみたいと思います。

価値観は人それぞれですしプロではないので、独断と偏見に満ちた意見であることはご了承ください。

不動産会社に依頼する

物件探しは探しているエリアにある複数の不動産仲介会社に依頼しましょう。

理由-1

それぞれの会社が独自で持っているフレッシュな物件があるかもしれません。それに、不動産屋さんも商売ですので自分たちがより儲かる物件を勧めることもあると思います。

理由-2 

不動産会社というより結局はその中で働いている人物に相談することになり、その人の経験、知識、やる気、忙しさなどに影響されてしまいます。物件探しもそうですが住宅ローンの依頼先を紹介するのも不動産屋さんの仕事ですので、担当者の力量に寄るところは大きいですね。

理由-3

良い物件との出会いは一瞬のタイミングです。多くの情報を得られるようにしておきましょう。

リノベーション工事費を住宅ローンに含める

リノベーションをすることを伝えて、工事費用を住宅ローンに含めたい場合はその意向を伝えて探してもらいましょう。親切な不動産屋さんなら金融機関も紹介してくれるかもしれません。

工事費の相場

その場合の工事費用についてですが、大切かつ複雑なことなので一度ハンズデザインにお越しいただきお話をさせていただければと思います。思い込みやインターネットで調べた相場などで判断しない方が良いです。不動産価格との「物件を探し始めようかな」ぐらいのタイミングで一度ご相談ください。

融資審査のための工事見積書

リノベーションの工事費を住宅ローンに含めることを伝えると、工事費のわかる見積書などを求められることがあります。工事内容が決まっていなくても物件が決まっていれば、住まいのご要望とご予算などご相談の上で、概算の見積書を作成しますので、融資の審査を進めて頂くことができます。

住環境

当たり前のことですが、生活する環境として街や風景が好きかどうかは大切です。
初めての場所なら何度も訪れて色々な時間を体験してみた方が良いと思います。

緑の見える眺望や見晴らしの良い眺望などが望める物件や静か街並みなどは不動産情報だけではわかりにくいので、散歩やドライブの途中で良い物件と出会ったらチェックしておくのが私たちの楽しみ方です。

維持管理

物件に求めるものとして一番大事なのは安心できることです。

そのため管理組合のこと管理会社のこと、修繕積立金が滞っていないか、維持管理は適切か、空室が多くないかなど、長期にわたって安心して住むことのできるマンションであることを不動産屋さんに確認してもらいましょう。外観や共用部などぱっと見の印象も大事ですので、内見の時によく見ておきましょう。

眺望

戸建て物件に比べてマンションの良いところは、開放的な眺望が得られることだと思います。室内の素材や間取りはリノベーションで変えられても、風景を変えることはできないので、内見の時には色々な角度から外の風景を眺めてみましょう。「良いな、好きだな」と思えたら素敵ですね。

経験

物件探しはなかなか経験しないことだと思います。だから経験を積むつもりでたくさん内見しましょう。そうすると自分の好みや気になることがだんだん分かってくると思います。良い物件との出会いは一瞬です。迷いすぎると他の方や再販業者に先取りされて後悔することになりかねません。

ハンズデザインが開催している完成見学会にも参加していただければ、実例を見ながら質問にお答えできますので、疑問がクリアになると思います。

経験を積んで目を養っておくことで決断の迷いも少なくできると思います。

購入の最終決断はご自身でしていただかなくてはいけませんが、第三者目線での意見が欲しかったり、プランニング上のできること、できないことなどを判断したい場合には、私たちとのタイミングが合えば、一緒に内見することもできます。

築年数

私たちの家は1986年に建てられたマンションです。古さとしてはギリギリのラインだと思います。窓のサッシや玄関ドアなどリノベーションで変更できない部分の劣化は否めません。維持管理がしっかりしていることが救いです。

あまりにも古すぎるマンションは、設備配管の方法が今と違ったり、窓のサッシや玄関ドアを含めた共用部分の劣化が行きすぎていたり、断熱が不足していたりして、リノベーションに適さないことが多いです。私たちの家より新しい物件を選びましょう。

リノベーションのしやすさ

物件による「リノベーションのしやすさ」みたいなものはありますが、あまり気にしすぎると選択肢が少なくなりすぎてしまいます。壊せない壁やPSという配管スペース、窓と玄関ドアの位置次第でプランニングが変わります。親切な不動産屋さんなら壁が壊せるかどうかぐらいは教えてくれると思います。わからない場合はご相談ください。室内に壊せないものが少なければ自由な間取りになりやすいです。

完璧な物件はないかも…

街が好きで窓からの風景が好きで、気持ちの良い光と風を感じることができれば最高だと思います。室内についてはリノベーションで頑張って暮らしやすくて居心地の良い住まいにしますし、人間は適応することもできます。全てがパーフェクトな物件なんてないと思って、たくさんの物件を見た後はあまり考えすぎず、第一印象を大事にして決断するのが良いのかもしれません。

暮らしを重ねることで愛着のあるかけがえの無い我が家になっていくのだと思います。

読書の時間ー「人生がときめく片づけの魔法」

こんにちは。

これから住まいづくりを考えている方に是非もう一度読み直してもらいたい一冊があります。
人生がときめく片付けの魔法

人生がときめく片付けの魔法

サンマーク出版
2010/12/27
近藤麻理恵(著)

世界的に有名な本なので今更紹介ということもないと思いますが、意外とちゃんと読んだ人は少ないのではないでしょうか。僕も10年近く啓発本の棚に並び続けているこの本を目にしたり、内容を小耳に挟んだりしたものの、読んだことはありませんでした。しかしある理由でこの本を手に取ってちゃんと読むことにしました。

住まいというのは限られたスペースです。その中にリビング、キッチン、トイレ、浴室、収納など必要な場所がいくつかあって、その配分バランスを整えることになります。当然、何かが増えれば何かを減らすしかありません。

私たちが大切にしていることは、暮らしている人の生活の風景をしっかり把握することです。その方法の一つは、住む人のモノの所有のカタチを詳細にヒアリングし調査することです。例えば洋服の場合、脱いで洗濯して干して収納して着るまでの動作、方法、収納する量などを明確にするようにします。

「どのようにやっていますか?」

「それはどうしてですか?」

「ここにある数量で十分ですか?」

「ここにある中に不要なものはどのくらいありますか?」

このような会話を繰り返して、それぞれの住まいのバランスを探っていきます。

その中で、人によっては収納の話ばかりになってしまうことがあります。ほとんどのお住まいはゆとりがあるとは言えない広さです。その中で、居心地の良いスペースを作りつつ、たくさんのモノを効率よく使いやすく収納することを考えるのは難解なパズルのようなものです。もう少しモノを減らせないか、あるいはまだどこかに収納を作れるのではないかなど、収納の話ばかりになってしまうと、暮らし方やデザイン、素材、照明などの話題までが遠くて住まいづくりがなかなか深まりません。

反対に、お話しして短時間で、非常にスムーズに暮らしの風景を把握できる方もいます。物が少ないこともありますが、すでにご自身で「モノの持ち方」について検討と整理が終わっているので、私たちのような第三者にクリアに説明できるようになっているのです。さらに良いのは、そういった方々は新しい住まいでは「このようにしたい」という具体的なイメージまで持っていることが多いということです。

残念ながら前者の方と後者の方では住まいづくりの深度に差が出てしまうように感じます。私たちが住まいづくりでみなさんと関わりを持てる期間はそんなに長くありません。相談が始まってから、モノの所有のカタチを見直すのか、その前に済ませているか、その差は大きいと思うのです。

だから住まいづくりが始まる前段階に、自分の暮らしの中にあるモノを見直すきっかけになり、具体的に実行に移しやすい方法が何かないかと考えていた時に、この本に思い至ったという訳です。

この本には『まずは「捨てる」を終わらせる』、そしてその前に『理想の暮らしを考える』と書いてあります。これは住まいづくりに通じることだと思います。

具体的な方法として僕が大切だと感じた言葉は、ただ捨てるのではなく、『「一つひとつ手にとって、触ってみること」が重要です。』でした。作者は「ときめきを感じる」と表現していますが、どんな感情でそのモノを所有しているかは、眺めているだけでは感じることはできず、手に取って初めて感じるという感覚はその通りだなと思いました。

さすが世界中の人々から共感を得ているこの本の内容は本質的かつ具体的です。他にもたくさんもっと行動に移しやすく感覚的にわかりやすい内容が書いてあるので、まだ読んでいない人は是非読んでみてください。一度読んだことがある人は、きっと新しい住まいづくりの準備ができているはず?!

読書の時間 -「あるミニマリストの物語」

こんにちは。

住まいづくりを考えている皆さんに、以前からご紹介したいと思っていた本があります。

あるミニマリストの物語

あるミニマリストの物語―僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで

フィルムアート社
2016/4/11
Joshua Fields Millburn (著), Ryan Nicodemus (著), 吉田俊太郎 (翻訳)

人に出会えば出会うほど、世の中には本当に色々な人がいるものだなと感じます。私たちが仕事柄、たくさんの方の住まいづくりが始まる前の家を訪問して、生活のシーンを見せてもらうことが多いから余計でしょうか。当然2つとして同じ風景はなく、それどころか、どの暮らし方もある意味、ユニークさとオリジナリティに溢れています。考えてみれば当たり前のことで、暮らしの風景も人も、それぞれ世界にたった一つの固有の時間を蓄積して現在があるからです。

あるがままに受け入れて考えれば、誰しも「全く意図せずに」様々な物や人の影響を自然と受けて現在があります。生まれた場所、親、時代、育った環境や住まい、子供から大人への教育と成長の過程、まわりの大人や友人、どれをとっても自分で自由に選ぶことができたわけではなく、言ってみれば、たまたま手の届く範囲で同じ時に居合わせた状況の中で、生きていると言えると思います。

そんなことに思いを巡らせていると住まいづくりとはある意味、センセーショナルで希少な瞬間なのだということに気がつきます。ほぼ白紙の状態から、自分のために「とても意図的に」生活環境を作り出すという出来事は、ほとんどの方の場合、初めての体験になると思います。まさに人生の大転換点なのです。同時に自分自身について深く見つめなおす絶好の機会でもあります。「僕は、なりたい自分を知っているだろうか、身を置きたい日常を理解しているだろうか?」その過程で大変身することだってできるはずです。

大げさでしょうか?

僕はそうは思いません。住まいを持とうと思うぐらいの人生経験を積んだ頃には、まわりを囲んでいる意図しないモノからの影響があまりにも大きくて、自分のシンプルな姿が見えにくくなっています。過去の蓄積だけではなく、現時点でも様々なコマーシャルや伝聞により、他人の先入観や価値観の押し付けが容赦なく降り注ぎます。

それまでの人生で積み上げられてきた経験や所有物のことを白紙に戻し、まわりの雑音に耳を塞いで、暮らし方、あるいは人生を、自分自身と向き合いゼロから検討をする、それだけの価値が住まいづくりのタイミングにはあります。人生の中でまたと無い貴重な機会であることは間違いありません。

そんな時に、「ミニマリズム」「ミニマリスト」という価値観や生き方に触れることはとても良い経験になるのではないかと考えています。僕としては、ミニマリストであると宣言するつもりはなく、礼賛するのでもなく、もちろんみなさんに強く推奨するつもりもありません。でも、この本の物語の中には、私たちが住まいづくりの過程で経験するもの同じ匂いのする「気づき」が多く感じられます。新しい住まいや環境、生活の変化に向かう時に、前向きな勇気と希望を与えてくれるように思います。人生がどれほど自由なのかということに気づかせてくれます。

ミニマリズムについて知っている人は、断捨離や収納に関係する本だと思われるかもしれませんが、この本はそれだと期待を裏切ってしまうかもしれません。著者が体験した本当にあった物語で、住まいづくりと直接的な関連性はあまりありません。この本の帯には次のように書いてあります。

『これは「片付け」や「収納術」の話ではない。そう、これは「人生」の話であり。「あなた」の物語である。』

僕は昔から、苦境にある人が様々な経験を通して成長していく物語が好きで、この本もそんな小説のようで面白かったです。教養書、実用書ではないので、情緒的で少しくどくて忍耐が必要なところがあります。

あ、ちなみに、、、実際に家づくりの後に人生が変わる人も少なくないですよ。

お時間があれば是非、手にとってみてください。