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読書の時間 -「あるミニマリストの物語」

こんにちは。

住まいづくりを考えている皆さんに、以前からご紹介したいと思っていた本があります。

あるミニマリストの物語

あるミニマリストの物語―僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで

フィルムアート社
2016/4/11
Joshua Fields Millburn (著), Ryan Nicodemus (著), 吉田俊太郎 (翻訳)

人に出会えば出会うほど、世の中には本当に色々な人がいるものだなと感じます。私たちが仕事柄、たくさんの方の住まいづくりが始まる前の家を訪問して、生活のシーンを見せてもらうことが多いから余計でしょうか。当然2つとして同じ風景はなく、それどころか、どの暮らし方もある意味、ユニークさとオリジナリティに溢れています。考えてみれば当たり前のことで、暮らしの風景も人も、それぞれ世界にたった一つの固有の時間を蓄積して現在があるからです。

あるがままに受け入れて考えれば、誰しも「全く意図せずに」様々な物や人の影響を自然と受けて現在があります。生まれた場所、親、時代、育った環境や住まい、子供から大人への教育と成長の過程、まわりの大人や友人、どれをとっても自分で自由に選ぶことができたわけではなく、言ってみれば、たまたま手の届く範囲で同じ時に居合わせた状況の中で、生きていると言えると思います。

そんなことに思いを巡らせていると住まいづくりとはある意味、センセーショナルで希少な瞬間なのだということに気がつきます。ほぼ白紙の状態から、自分のために「とても意図的に」生活環境を作り出すという出来事は、ほとんどの方の場合、初めての体験になると思います。まさに人生の大転換点なのです。同時に自分自身について深く見つめなおす絶好の機会でもあります。「僕は、なりたい自分を知っているだろうか、身を置きたい日常を理解しているだろうか?」その過程で大変身することだってできるはずです。

大げさでしょうか?

僕はそうは思いません。住まいを持とうと思うぐらいの人生経験を積んだ頃には、まわりを囲んでいる意図しないモノからの影響があまりにも大きくて、自分のシンプルな姿が見えにくくなっています。過去の蓄積だけではなく、現時点でも様々なコマーシャルや伝聞により、他人の先入観や価値観の押し付けが容赦なく降り注ぎます。

それまでの人生で積み上げられてきた経験や所有物のことを白紙に戻し、まわりの雑音に耳を塞いで、暮らし方、あるいは人生を、自分自身と向き合いゼロから検討をする、それだけの価値が住まいづくりのタイミングにはあります。人生の中でまたと無い貴重な機会であることは間違いありません。

そんな時に、「ミニマリズム」「ミニマリスト」という価値観や生き方に触れることはとても良い経験になるのではないかと考えています。僕としては、ミニマリストであると宣言するつもりはなく、礼賛するのでもなく、もちろんみなさんに強く推奨するつもりもありません。でも、この本の物語の中には、私たちが住まいづくりの過程で経験するもの同じ匂いのする「気づき」が多く感じられます。新しい住まいや環境、生活の変化に向かう時に、前向きな勇気と希望を与えてくれるように思います。人生がどれほど自由なのかということに気づかせてくれます。

ミニマリズムについて知っている人は、断捨離や収納に関係する本だと思われるかもしれませんが、この本はそれだと期待を裏切ってしまうかもしれません。著者が体験した本当にあった物語で、住まいづくりと直接的な関連性はあまりありません。この本の帯には次のように書いてあります。

『これは「片付け」や「収納術」の話ではない。そう、これは「人生」の話であり。「あなた」の物語である。』

僕は昔から、苦境にある人が様々な経験を通して成長していく物語が好きで、この本もそんな小説のようで面白かったです。教養書、実用書ではないので、情緒的で少しくどくて忍耐が必要なところがあります。

あ、ちなみに、、、実際に家づくりの後に人生が変わる人も少なくないですよ。

お時間があれば是非、手にとってみてください。

私たちの家の冬

私たちの家には住まいづくりの相談で多くのご家族がお越しになります。その方々から「こういう間取りで寒くないですか?」というご質問を受けることがよくあります。私たちの家は72㎡のマンションで、リノベーションによってドアがなくて、部屋を仕切る壁も少ない、全体の空気がつながっているワンルームになっています。室内を暖房する時、できるだけ空間を狭くした方が良いという考えがあって、このような住まいを見たときに疑問に思われるのだろうと思います。

私たちの家の冬

一つ言えることは、72㎡は温熱環境に関していえばこれ以上区切る必要はないほど十分に狭いということです。私たちの家では、南側のLDKはガスファンヒーター、北側の寝室にデロンギのマルチダイナミックヒーターを使っています。家中の温度が平均的でいつどこにいても快適です。朝、目を覚ましたらパジャマのまま起きて朝ごはんの準備ができます。休日ののんびりした時間には暖炉に火を灯します。炎を見て過ごす静かな時間は冬の楽しみの一つです。

デロンギのマルチダイナミックヒーターは音も風も炎もない暖房器具で、器具自体はそこまで熱くなりません。現代版のオイルヒーターのような雰囲気ですが、意外と早く部屋が暖まります。曜日ごとに詳細な時間設定や温度設定がスマートフォンで管理ができます。平日は起床前に暖房スタートし外出前にストップ、また帰宅前のに暖房スタート、就寝前にストップするようなプログラムにしています。購入前に少し心配していたデザインもそこまで存在感がなく、満足しています。

ガスファンヒーターはすぐに暖かくなり、空気が乾燥しないので好んで使っています。燃料を補給する必要がないことや、機器のサイズが小さいこと、効率が良くランニングコストが低いことなどのメリットもあります。朝はタイマーで起床前に暖房が始まるようにセットしています。

暖炉は、エコスマートファイアーというバイオエタノール暖炉です。静かで安定感のある炎で熱量が大きすぎないので使いやすいと思います。お手入れもほとんど必要ありません。マンションでも簡単に置くだけで設置ができる手軽さで、炎が近くにあるのはとても良いものです。

マンションという建築物は室内の温熱環境的にはとてもよくできています。また生活家電もエアコンやヒーター、床暖房などエネルギー効率、省エネルギーが昔に比べてかなり改善されました。窓まわりが結露する弱点も、二重窓にすることでほとんど改善されます。これらを組み合わせることでとても快適でコストパフォーマンスの良い住まいが実現できると思います。もちろん、間取りによる空気のつながりやすさによって冷暖房機器による効果の違いはありますが、壁とドアで閉じられたそれぞれの部屋の温熱環境をコントロールするより、住まい全体をまとめてコントロールした方がずっと快適で、エアコンやヒーターなどの設備機器の台数も少なくて済み、決して不経済ではないと考えています。

冷暖房の効率性ばかりを考えて住まいを細かく細分化しなくても、のびやかに連続した快適な温熱環境がつくれることを実感しています。何より住まいの中に暖かい場所や寒い場所があるのはあまり気持ちのいいことではありません。住まいを細分化すれば部分的な気温差が大きくなりどうしても快適ではない場所ができてしまいます。寒い冬でもお布団の中だけじゃなくて住まい全体が快適な方がいいですよね。

まだまだ寒い冬は続きます。体調管理に気をつけて健康第一で楽しい冬をお過ごしください。

スマートなエアコンを設置しました!

こんにちは。今年は夏が長くてホント暑いですね!

7年の間、私たちの家ではエアコンのない生活をおくってきました。
(冬はガスファンヒーターで暖をとるのでいらなかったのです)

エアコンの風や冷える感じがあまり好きではないことや、
かっこ悪いのに主張する存在感がどうしてもつけたくない理由でした。

それから風が通り抜ける家は暮らしてみると直射日光が差し込む時間帯以外は、
真夏でも心地よい風が通り抜けとても快適に過ごせてきたのです。

でも、今年の夏はとうとう根をあげてしまいました・・・
朝から30度の無風状態が続き、さすがに限界を感じる日々。
年々、気候自体の変化を感じますね。

そんな折、ダイキンからシンプルで薄型なデザインのエアコン『risora』が発売されたことも後押しして、
ついに今年の夏エアコンがつくことになりました!

7年前にリノベーション工事をした時、エアコンの設置は考えていたので室内側に配管が見えないよう、
壁の中にドレン管や冷媒菅を仕込む「隠蔽配管」をしておきました。

エアコンを設置していないときは、丸い筒で配管を隠していましたが、この中にエアコンにつながる配管があり、元々あったエアコン用の穴(30cmほど下にあります)まで壁の中を通って屋外の室外機へつながっていきます。

TKS_6613

この工事は壁の中に配管を仕込むので最初に行わないとできない工事です。
外壁と室内の間にもう一つ壁をつくり、その隙間に配管を隠しています。
壁をいじるリフォームをするときなどはできる可能性があるので検討してみてください。
隠蔽配管の場合、エアコンの設置は量販店では対応してくれないことがあります。その場合はリフォーム・リノベーション会社の電気屋さんに頼むのがいいと思います。
すべてのエアコンが隠蔽配管ができるわけではなく、対応している機種を選ぶように注意してください。

隠蔽配管をすると、エアコンがついた時にズルズルとした配管がなくスッキリとした印象になります。
存在感があまりでなくて、ホッとしました。

TKS_6617

このエアコンの薄さは20cm、従来型の2/3くらいです。

TKS_6618

LDKは16畳くらいなので、18畳用のエアコンを取り付けました。

北側にエアコンの設置はありませんが、扇風機で空気を循環させてしばらくすると奥まで冷気が回ります。
キンキンに冷えるわけではありませんが、心地よい涼しさが冷えすぎなくてとても快適です。

1台で72平米のマンション1室をなんとかまかなえてしまえたことにちょっと驚きです。

せっかく設置したエアコンも、秋の気配が近づき最近はあまり稼働しない毎日です。
来年の猛暑に備えて、ということで。

床のこと-第2回

こんにちは。
床のこと-第1回(https://www.hands-a-design.jp/wp21/blog/4007.html)に続きます。
今回はフローリングについてお話しします。

フローリングには大きく分けて2つあります。
それは無垢フローリングとそれ以外です。

私たちは今のところ、基本的に無垢フローリングだけを使っています。
その他のフローリングについても、興味を持っていろいろ情報収集はしていますが、結局いつも無垢フローリングにたどり着きます。

無垢フローリングを使うのは、失敗のできない部分だからです。
新しい素材、建材を信用していないのかもしれません。
実際にいろいろな理由で使いにくいのです。

無垢以外のフローリングの代表格が、直貼用遮音フローリングです。
遮音フローリング
遮音マットを曲げると
本当にフニャフニャしていて、歩行感がフワフワしているので、なんとなくフローリングと呼ぶのも違和感があります。木質クッションフロアと言ったほうがしっくりきます。突板を使っている美しい商品もあるので、ハンズデザインでもどうしてもコンクリートスラブに直接フローリングを使う必要がある時には、使用します。

そして、下の写真が無垢フローリングです。
さまざまな無垢フローリング
木によって本当にユニークな特徴があり、簡単に説明することはできません。私たちは実物を触っていただきながら、少しずつ理解を深めてもらうように心がけています。今回は良く質問を受けることについてお話ししてみようと思います。

私たちの家では、アメリカンブラックチェリーのUNIタイプを使っています。広葉樹は真っ直ぐに育たないのと、成長が早くないので、長い一枚物に付加価値がつきます。そこで、工場で短い材料3枚程度をつないで2m程度の一枚のフローリングにします。
ABチェリー無垢床
これがUNI部分の写真です。木目や色が急に変わっているのがわかりますね。触っても継ぎ目はわかりません。フローリングとフローリングの目地は以下の写真です。
ユニ継ぎ目
UNIは樹種によって気になることもありますが、時間が経つと馴染んできたりします。

私たちの家では、杉の節なしも使っています。
杉は節が黒くはっきりしているので、苦手としている方も多いですが、節なしや上小節を選ぶと気にならなくなります。杉のいいところは、幅の広い長い一枚物が手に入りやすいことです。柔らかく傷がつきやすいデメリットを理解していただければ、お勧めできる材料です。
Iさんの家の杉床
無垢フローリングは、天然のオイルを塗装し、蜜蝋ワックスで仕上げます。現場で塗装することも、すでに塗装されている材料を使うこともあります。
私たちがよく使うのはドイツの自然塗料で、プラネットのハードクリアオイルです。
プラネットハードクリアオイル
オイルは木材に浸透して、自然な木の色味を出し、汚れの浸透を予防してくれます。さらに蜜蝋ワックスを塗装すると、木の表面をコーティングして、木材に直接汚れが付着することを防ぎます。木が汚れるのではなく、ワックスが汚れていることになります。

間違って汚してしまった時、ゴシゴシこすると汚れと一緒にワックスがはがれます。乾くとまわりに比べてカサカサとしてツヤがなくなったように見えると思います。剥がれてしまった部分には、ワックスをもう一度塗る必要があります。

蜜蝋ワックスはバターのような感じです。僕なんかは昔、野球の革のグローブに塗っていたオイルを思い出します。さっと塗って、しっかり拭き取ればいいだけです。
蜜蝋ワックス
全体的なメンテナンスは、人によって違うようです。やればやるほど、いいとは思いますが、やらなかったからすごく悪くなるというものでもないと思います。

普段のお掃除は、掃除機とたまに水を固く絞った雑巾ぶきです。ドライのクイックルワイパーなどもいいと思います。我が家はルンバ君にお願いしています。
ルンバ君

私たちが無垢フローリングに落ち着いている理由の一つが、無垢フローリングがフローリングであると同時に木材でもあるということです。
引き戸などで、上吊レールにしない場合、フローリングを加工してレールにしたり、加工して見切り材にしたりすることができるのも、無垢材料ならでこそできる技です。
フローリングに建具レール加工
名栗加工や溝加工で表情をつけることができるのも無垢ならではの楽しみですね。
Sさんの家スロープ
Sさんの家スロープうえから

リノベーションの間取りから考えること

毎回、工事が終わると手描きの間取り図をつくり、プランのポイントをまとめる作業をします。どんなことを考えてきたかを客観的に見るいい機会になっています。

Tさんの家:全て開くこと、つなぐことを最初に確認しました。
akiyama
リノベーションの場合には元々の間取りや暮らし方の存在があります。全く違う住まい、暮らしが同じ場所に出現する「変化」には驚きがあります。

しかし、ビフォーからアフターへと間取りが大きく変わったということ以上に、探してもどこにもないユニークな住まいと暮らしが次々に生まれてきた事実にもっと驚かされます。

場所を考える時に、閉じるか開くか、または切るか繋ぐか、その判断の繰り返しで住まいと暮らしのカタチは大きく変わっていきます。重要な判断です。

その判断の中心には住まい手がいます。私たちが質問をして、住まい手であるお客様が考えて判断して答える、その繰り返しです。

例えば、「寝室は閉じますか、開きますか?」そんな具合です。

この何気ないような問題について、結論を急がずに考えます。正解はないです。私たちも正直に考えをお伝えし、参考として様々な可能性を示しながら一緒に考えます。

Oさんの家:全て開いてワンルームに。北側の共用廊下に対しては閉じることにしました。
Oさんの家間取り
当事者のお客様と私たちにとっては、こうした判断のもとに徐々に出来上がってくる住まいのカタチは必然的なものです。しかし、客観的に見た時には、どうしてこんな変化が可能だったのかという驚きがあります。
Iさんの家:浴室を開くことを決めたことでプランは大きく変わりました。
Iさんの家間取り
私たちとしては、目新しい住まいを考えてやろうとか野心的な発想は持っていないつもりです。ただ、先入観と既成概念を排除し、常に新鮮なイメージでいようと心がけています。

その中で、探してもどこにもないような住まいが現れてくるというのは、住まい手の存在がとてもとても大きいのです。判断の根拠は、これまで生きてきた中で現れた気持ちなのか、海外での暮らしやホテルや旅館など非日常の中で得た経験なのか、それは人それぞれだと思いますが、千差万別です。

Sさんの家:寝室を閉じることで、他の部分を開放的にしています。
Sさんの家間取り

住まい手が、既成概念にとらわれずに「私たちはこうする」と判断してくださるところから新しい暮らしの風景が生まれていきます。

新築マンションという住まいの形の一つの時代が終わろうとしているのに、私たちの家のまわりは、今さらのマンションの建設ラッシュになっています。何百世帯もの住まいが建設中で、そのポスターや広告チラシを毎日のように目にしています。そこにはあまり誰も期待していない、版を押したような住まいの間取りが印刷されています。

同じものを効率良く大量に作って売るというやり方です。リノベーションでも同じ価値観で行えば、同じように効率良くたくさん作るということが起こるでしょう。すでに、そのような事例は見受けられます。

新築マンションの時に存在したニーズがリノベーションに置き換わったということです。「簡単に」便利で綺麗な住まいを手に入れたいというニーズです。効率を重視する売り手側の都合にも合致して今後増えていきそうです。

私はそれを少し心配しています。リノベーションの意義が失われていくように映ります。

私たちハンズデザインは住まい手が中心にいる住まいづくりを続けていきたいと思います。簡単にではなく丁寧に、必然的でありながらユニークな住まいをご提案していきたいと思います。